納豆の豆知識

納豆の歴史

日本人が納豆を食べ始めた時期ははっきりしませんが、縄文時代の終わり頃には既に納豆のようなものが食べられていたとも言われており、かなり古い時代から親しまれてきた食品のようです。 この頃には中国から稲の栽培方法が伝わりました。当時の人々が暮らしていた竪穴式住居には稲藁が敷かれていましたし、食べ物などを入れる容器としても使われるなど、生活に密接に関わるものでした。束ねた稲藁に、既に伝来していた大豆を煮込んで保存しておく、という使い方も十分考えられます。 では、なぜネバネバの納豆になったのでしょうか。

大豆が納豆になるには納豆菌の存在が必要です。納豆菌は枯れ草菌の一種で、土の中や稲藁、空気中などどこにでも存在しています。稲藁1本には約1,000万個の納豆菌が胞子の状態で付着していますから、稲藁の中で大豆が偶然発酵した可能性も非常に高かったのです。 ちなみに、「なっとう」という名前の由来ですが、

1.昔は、お坊さんがお寺の台所である納所で納豆を作って食べていたので「納所豆」と 呼ばれていた。これがつまって「納豆」となった。

2.昔、納所で作られた豆は、桶や壷などの容器に入れて貯蔵されていたことから、「納めた豆」が縮んで「納豆」となった。

3.神棚に供えた煮豆にしめ縄のはしっこが偶然ふれて、稲わらに住みついていた納豆菌が繁殖して豆が糸を引いた。 おいしい食べ物を授けてくれた神様に感謝し、神様に納めた豆という意味をこめて「納豆」と北国では呼んだ。

など、諸説あるようです。

納豆の種類

納豆は大きく分けると、 1.甘納豆、2.糸引き納豆、3.寺納豆の三種類になります。

1.甘納豆はお菓子で、豆を砂糖で煮詰めたものです。

2.糸引き納豆はいつもご飯と一緒に食べているお馴染の納豆です。 糸引き納豆は、丸大豆の納豆、ひきわり納豆の二種類に分かれます。

3.寺納豆は別名、塩辛納豆とも呼ばれ、大豆と小麦と麹菌(味噌やお酒を作る菌と同じ)を一緒に塩水に漬け込んで熟成させるので作るのに数カ月から1年かかります。出来上がると黒褐色の半分乾燥したものになります。
糸引き納豆のようなネバネバはなく、塩味と旨味が調和した独特の風味があります。

世界の「納豆」

納豆は日本各地で作られているだけでなく、外国でも作られています。
中国の「タチオ」は日本の寺町納豆や塩辛納豆に近いもので、塩気の効いた味。その他、アジア諸国にはさまざまな大豆の加工品があり、タイは「トアナウ」、ミャンマーでは「ペーポー」、アフリカでは「ダワダワ」と呼ばれています。
しかし、それらは日本で食べられているようなネバネバ納豆ではありません。
主に調味料や保存食にして食べられているようです。
ネパールの「キネマ」やインドの「バーリュ」などは、味や香りが日本の糸ひき納豆に近いようです。

大豆が納豆になるまで

納豆は大豆が発酵してできたもの。この発酵を促すのに欠かせないのが納豆菌です。高圧力の釜で蒸煮されふっくら柔らかくなった大豆の表面に納豆菌を接種させます。これを熱いうちに容器に詰め、発酵室の中で温度管理をしながら発酵させていきます。
室温40度の発酵室でおおよそ20時間発酵させる過程で、納豆特有の粘りがでてきます。
発酵が終わると熟成の段階に移ります。冷蔵庫内に置いて、発酵で増えた納豆菌を休眠させていきます。納豆の出来は、発酵から熟成までの温度管理にかかっているといっても過言ではありません。

納豆のねばり

納豆の粘りは、納豆菌が大豆のたんぱく質を分解してできたグルタミン酸と、糖の一種であるフラクタンという物質からできています。このグルタミン酸は昆布などに含まれるうま味の成分の一つです。納豆のネバネバはこのグルタミン酸という物質がバネのようにおりたたまれてつながっており、このおりたたみ構造がねばる原因だと言われています。また、フラクタンという物質には味はありませんが、ネバネバのおりたたみ構造を安定させる役目をもっています。

納豆のにおい

納豆のにおいは納豆菌が作りだすものです。納豆菌は大豆の成分を分解しながら増殖し、独特の粘りやにおいを作り出します。においの主成分はピラジン類、短鎖分岐鎖脂肪酸およびジアセチルです。製造後も日が経つにつれて少しずつ発酵が進みますので、においは徐々に強くなります。

容器の秘密

納豆の発酵は、納豆菌を接種させた大豆を容器に詰めてから始まります。容器は単なる入れ物ではなく、大切な発酵場所。納豆をおいしく育てる工夫がいろいろあります。

よく見かける容器は白い発泡スチロール製ではないでしょうか。これは保温性が高く、発酵室で安定して発酵させることが可能です。

発酵には酸素も必要です。酸素を取り入れるため、容器へ大豆を詰める時には、あまりギュウギュウに詰めないようにしていますが、発泡スチロール容器の底に凹凸があったり、蓋に小さな穴があいているのも酸素を取り入れるための工夫です。ただし、大豆が乾燥してしまうといけないので、穴を開けた薄いフィルムを被せて乾燥を防いでいます。

納豆に含まれる様々な栄養素や成分

納豆は日本の伝統食品の一つです。主な栄養成分は、たんぱく質、脂質、カルシウム、鉄など大豆とほぼ同じ栄養を含んでいますが、脂質代謝に欠かせないビタミンB2を大豆に比べ多く含んでいるのが特徴です。

納豆特有の成分として特に注目されているのがナットウキナーゼです。これは大豆を納豆菌で発酵させることによって生まれる酵素で大豆には含まれていません。ナットウキナーゼは血管のつまりの原因である血栓を分解する作用があると言われています。ほかにも納豆菌が作り出す成分としてはビタミンK2があります。ビタミンK2はカルシウムを体内に取り込むために無くてはならない栄養素です。このように「大豆」にはない栄養素も含有する納豆は手軽に食事に取り入れる事ができる優れた食品なのです。